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IST India Report


IST India Tour 2015 Report     Yoshiaki Tsuganezawa (UTokyo)

15 Oct. 2015 / IST India Report

飛行機を降りた直後の異国の空気が身体を包む時のあのなんとも言えない感覚、違和感と緊張感と期待感がないまぜになったような感覚がたまらなく好きだ。インドの空気はだけど、心なしかカレーの香りがして思わず口元が緩んでしまったことを覚えている。

今回インドに行ったのは、ITにおける重要性の増すインドのことを知りましょうという企画に参加したからで、情報系の学生としてアジアのシリコンバレーと言われる都市に興味があったからだ。

 

けれどいざ、インドに着くとはじめはそれどころではなかった。

広大な大地、都市に溢れる人々、建設途中で放棄された家々、高級ホテルから見下ろすトタンを集めて作った家、でこぼこの道路を埋め尽くす車、道を歩く牛、ヤギ、犬、クラクションで溢れる音、異なる宗教、言語、何もかもが日本と違いすべてが渾然一体となった世界が広がっていた。

それをうまく語る言葉を見つけられず、ただただ五感から入る情報を少しも落とすまいとするのに必死だった。一方で夜に見上げる月は日本で見る月と同じで逆に奇妙さを感じたりもした。

人間面白いもので2,3日もするとかなり慣れている自分がいて、何より食事が最高に美味しかった。食事はさておき、今回の一週間の旅程では、日系企業、研究所、外資系企業、大学と様々な施設を巡りまたお話を伺う機会があった。旅程を終えて感じたことがある。

一つは、日本がグローバルにアカデミア・ビジネスを考える時、インドに注目すべきであるということである。それは、単に市場として大きいから、市場の成長率が高いからというだけではなく人材市場としてのポテンシャルが非常に高いと思うからである。幾つか理由があって、一つは人口が多いので優秀な人材の絶対数が大きいこと、もう一つは日本のように成熟した教育システムが存在しない中で学問の競争をくぐり抜けてきた優秀なインドの学生には日本の学生とは比較にならない主体性と熱意があるからである。後者については、IITHでインドの学生と話す中で強く感じた。こうした人材をいかにうまく獲得していくかが大切だと感じた。同時に感じたのは、日本の大企業はインドを次の中国と捉えて過去のベストプラクティスを移植する傾向にあるがそれだけでは現状維持しかできないだろうということ。インド市場のパイを取ることももちろん大切だがインドの人材、環境をリソースにグローバルのパイをどう取るかが鍵なのではないか。現にアメリカは30年前からバンガロールに着目し次世代のIT都市として米企業の積極的な誘致を政策として行い現在では現地スタートアップの育成、メガベンチャーによる買収、優秀な人材の登用を行っている。

もう一つは、日本の学生は、対外的な意識を持たなければいけないということである。言葉にすれば当たり前のことではあるが私自身の自戒を込めればやはり対外的な意識というものに欠けていた。単に世界がどうなっているかを知るとか世界情勢に即して自分を変えていくということではなくて、世界に自分たちが働きかけるということの必要性を痛感した。キャッチアップするのではなくリードしていくこと。そのためには常に世界に対して広範な分野での主体性を持たなければいけないのではないか。

自分の思考の枠組みを広げる上でとても貴重な体験ができました。このような機会を設けてくださってありがとうございました。

IST India Tour 2015 Report     Daichi Murakami (UTokyo)

13 Oct. 2015 / IST India Report, Students' Voice

1 世界に触れて

この旅中に手にした一番大きなもの。それはインド人の素晴らしさとか、相対的に日本を発見し たとか、まして旅行の楽しみだとかではない。何十年も憧れ、なかなか機会を得ず後回しにしてい た日本国外への渡航。しかもただの渡航ではなく、その土地で、私と同じ分野 (情報工学) で未来 を睨む企業や、同年代の学生との交流の中で、見えていなかった自分野の可能性、そして世界の近さを意識した。これはかけがえのなく、そして得難い意識だ。本報告では、知らず知らずのうちに遠ざけていた世界が近くなったこと、情報工学の可能性の 2 点に焦点を当てたい。

2 世界に抱いていた距離

2.1 壁

だいたいの日本人学生にとって壁となり得るのが言語なのは仕方がない。それは私にも同じく当てはまる。怖くて TOEIC や TOEFL など受けられたものではない段階の学生が身の回りも含め、 相当数いる。(私の属しているクラスタに偏りがあるのは否めない。)私においても、TOEIC は 1 度も受けたことがなく、自分の英語がどのレベルかは知らない。中・高時代に培った限られた文法 とわずかな単語、そして研究を通じて知った専門用語のみ。当然ながらリスニングテストなど満足にできた試しなどない。

私のような学生には世界は異常に遠い。よく「英語を覚えるには留学が一番」などと吹聴される が、その留学のための資金獲得には TOEIC のスコアが必要なわけで、タマゴが先か、ニワトリが先かの論に行き着く。

2.2 中国・インドの両学生との交流を通して

ホテルで同室の張さんが中国人だったので、図らずもこの旅中で、インド人学生、中国人学生との交流が出来た。張さんが日本語を操らないため、否応にも会話は英語になってしまうが、想像した以上に普通に意思疎通ができた。(もちろん張さんの涙ぐましい努力もあったのだが。)意思疎 通の内容は端目では拙いものに違いないが、不安だったリスニングに関しては、別にテストと違ってなんども聞き直せばいいだけだし、文法だってめちゃくちゃだったけれど、専門用語さえ使えれ ば、ほぼ単語だけでも十分に意味のある交流ができた。私にとってこのことは大きな驚きだったし、幾分も壁が低くなった。張さんからも、「別にそれだけ話せるのなら海外に行けばいい。日本にいる限り英語はそのレベルのままだろうけど、もし行けばずっとよくなるから。」と自身の経験 を交えた励ましをいただいた。

本筋からは逸れるが、私と彼ら海外の学生の間に気づいた共通の、違いが 2 つある。

2.2.1 会話の手続き

日本人、特に関西人として、私は、まとめた一連の話をまず受け取って、それに対する反応を返 すという動作をコミュニケーションの礎として据える。ボケ(話を筋から逸らす)とツッコミ(話 を筋に戻す)の例を思い浮かべるのだが、とりあえずは話を聞かなければならない、というのは暗 黙のうちにそうだろうと思っていた。今回初めて外国人の中に混じって議論をしたのだが、彼らの 話はいつまでたっても終わらない。会話をするためには、割って入らなければならない。当初は 割って入るということに、異常なストレスを感じていたが、これだけでは全編に渡って聞き手に留 まってしまって、これもストレスだった。最後の方にようやく、こちらからも発信することができ たが。異なる手続きの相手と話すことは、英語云々の前に、かなりの慣れを要することが身を持って体感された。

2.2.2 確実な意思疎通の方法

どうやら私の会話速度は遅い。普段無意識に意識していたことだが、一度で理解してもらうため に、文の構成や、選ぶ単語などに不断に気を使っている。彼らにしても、理解をしてもらうために 話をする点は間違いないが、違うのは、何度も繰り返し同じことを言う点にある。曖昧な思いつき をとりあえず口にして、何度も繰り返すうちに次第に FIX して、確実な理解を求めていくという 流れになるため、途切れることなく、かつ高速に語りかけてくる。実際に議論と言う場でこれに遭 遇し、これには終始閉口し通しだった。言葉を発する時に、ものすごく考えてしまって、結局自分 の中で納得して言えず終いだったことがたくさんあるが、せっかく会話なのだから、なんらか行ってみて、フィードバックの一つでももらえばよかったと後悔がある。

3 情報技術の可能性を世界に見て

インドを回り、インドに見出した問題点は数多い。例えばゴミ、そこらじゅうにゴミが打ち捨 てられおり、非常に不衛生だった。絶対的に信号が少なく、交通の状況も劣悪だ。道を渡る時は、 ジェスチャーで車を静止しつつ、壊れた信号を横目に横断しなければならない。また、これは学生 から聞いた話だが、警察の汚職がひどいらしい。例えば交通事故や交通違反をしたとして、チップ を握らせれば目をつむってもらえると言う。とりあえず、インドに住みたいとは心の底から思わなかった。

3.1 制御への情報技術のアプローチ

先に見た 3 つに関して、インドには制御機構が圧倒的に欠けている。日本においては、制御の主 役は人のように思う。警察の汚職がそこまでひどくはないし、ゴミを捨てる人も回収する人にも一 定のモラルがある。交通だって、基本的には横断歩道を信号が青の時に渡るという意識が、我々全 員に与えられている。(信号がなかったり、あったとしてもだいたい壊れているインドにては、そ の意識は芽生えないだろう。)このような制御は、本来情報技術が得意とする分野であるが、前述 の通り日本においては、長年培った人による制御が完成されていて、そこに情報技術が入り込む余 地がない。ただ、もともとこの制御機構がないインドなど、また数多くのインド以下の水準の国な どへは、根底から構築できる余地がある。

汚職の制御。廃棄物の制御。交通の制御、個々の事例について、日本に完全なものがあるかと言えばそうではないし、日本でも必要とされているが、問題が表面化しにくいのも相まって、意識が い。ただし、インドにおいてこの欲求は相当あると思われる。特に今から都市を作っていこうと している段階で、根底からデザインしていこうとインド人学生は考えていた。これは実際に議論したインド人学生が「スマートシティ」なる言葉を使っていたことから推測する。インドを含め、無 数の途上国という、日本とは比にならないくらい大きな市場に、このような形で情報技術が金になる可能性を感じたことは、非常に励みになった。(無論ここでの途上国という言葉の対象が、幾分か大きいことは、了承いただきたい。)

4 終わりに

日本の市場は狭い。それは土地であれ、人口であれ明らかだ。そして、入り込む隙間がほとんど ない。対して世界には多く可能性があるのに、私は壁を前にして実感ができていなかった。こと IT に関すれば、日本のように’ 既に出来上がった’ 政治や医療の根底に、もはや参入することが難 しい。ただ、世界にはまだ、これから構築していこうとしている場所が数多くある。これはチャン スだ。日本企業がインドにおいて成功している事例、苦戦を強いられている事例などを実際にみ ると、先手に回るか後手に回るかが、成功と失敗をわかつような気がする。世界に転がった IT の チャンスに対して、先手を取って、一攫千金のチャンスをモノにしたいと心から思った。世界に対 して不要な壁を感じていたままであったら、私は後手に回っていただろう。この重大な意味におい て、思いのほか世界の近さが実感できた今回の視察は、かけがえなく意味のあるものだった。

 

付録・インド写真

図1 交通状況俯瞰: 歩道はなく。信号もない。

図2 打ち捨てられているゴミ

図3 打ち捨てられているゴミ

図4 とにかく歩道のゴミは凄まじい

図5 情報技術による出席管理。日本では良心にまかせられている部分。

図6 食べ物: 同じ色で同じ味。ちなみにこの中に一つブロッコリーがある。

IST India Tour 2015 Report     Takato Matsuo (UTokyo)

08 Oct. 2015 / IST India Report

私は今回のインドツアーを通して,今までの価値観を大きく変えました.

・海外に行くということ

海外に行く経験が初めてということもあり,人生で最も英語に触れた一週間となりました.英語のインプットとアウトプットをこれほど密度濃く行うことは日本では不可能でしょう.それらの英語によるコミュニケーションを通して,自分の英語能力のなさに失望するとともに,文化の違う相手に英語を通して自分の意思を伝えることの楽しさ,喜びを知りました.現地に行きその土地の言語でその土地の人とコミュニケーションを取ることで,日常に入り込む感覚を味わいました.そうすることで初めて,海外に来たということを実感しました.

・企業視察

インドはIT産業が活発で,なおかつ優秀な人材を低コストで雇用できるため,中国に続く海外からの企業展開が行われているということは以前から漠然と知っていましたが,実際の現場ではどのようなことが行われているのかについては知りませんでした.

最初に訪問したバンガロールにある,ソニー・コンピュータでは,ソニーでのインド展開の過程と今後の展望についてはもちろん.インドにおけるIT産業の変遷や,人々の文化や思想などについても興味深い話を聞くことができました.その中で特に,印象に残っているのは,海外の企業と日本の企業のインド展開におけるやり方の違いについてです.AdobeやMicrosoftなど,海外の大手企業のやり方は,インドにプロジェクトと人材を丸ごと移転し,現地密着型の戦略をとっているのに対し,日本の企業はインドに拠点を設けるものの,プロジェクトを委託することはせず,あくまで下請けとして利用しているというものでした.そのうえで,現地にしっかり根付き,多様な人々が混在するインド独特の文化やニーズを把握しなければ,展開は難しいとおっしゃっていました.その後訪問した日立製作所では,三年間におよぶ活動で40人までしか規模を拡大できておらず,インド展開に苦しんでいるとおっしゃっていました.インドには優秀で低コストの人材が多くいるものの,今や多くの海外の企業が進出してきている中で,いかに企業のブランド力をたかめ,どのように人材を確保するのかが,重要なファクターの一つとなっているように感じました.

後日訪れたInfosysでは,衝撃を受けました.インフラ整備の行き届いてない地域のなかに突然,水,

電気,道路などのインフラはもちろん宿泊施設やレストラン,スポーツジムや保健センター,各種娯楽施設までそれ自体で完結した領域が現れました.そこがマイソールにあるInfosysです.

そこでは社員の研修を中心に,開発や研究も行われていました.各種施設に圧倒される中で,インドにおけるIT産業自体の勢いのようなものを肌で感じることができました.

 

・IITHでのワークショップ

インド工科大学のハイデラバード校でIITHの学生と交流,ワークショップに参加しました.最も苦しんだのは英語でのコミュニケーションです.日常会話がやっとのスキルで,専門用語を用いて議論を交わすのは予想以上にハードルが高く,相手の意思を正確に把握することができない,また自分の意思を正確に伝えられないことにもどかしさを感じました.

また自分と同世代の学生と交流する中で、外国の自分と同じ分野を学ぶ学生の存在を強く意識しました. それはうれしくもり、少し焦りも感じました.

以上がインドでの研修における概要と私が感じたことです.インドの企業や学生は常にグローバルスケールで物事をみています.海外からインドに展開している企業はもちろん,拠点をインドに構えている企業も常に海外の企業とビジネスをしています.市場は全世界.学生も積極的に特にアメリカへの留学やインターンシップを行っているようです(就職はインド国内でする傾向があるようです).私は自分の将来を考える際,常に舞台は日本でした.研修を終えた今,ITを学ぶものとしてその考えは致命的であったと気づきました.もちろん,日本から世界に何かを発信したいとは漠然と考えていました.しかし,そうではなく世界に出なければならないと強く思うようになりました.世界に出て,英語でコミュニケーションをとり,世界の動きを肌で感じなければ世界市場の求めるスピードについていけないと感じました.海外に出て日本をみると考えが変わるということはよく聞きますが.それを実際に体験し,驚いています.

私は今回のインドツアーを通して,今までの価値観を大きく変えました.これから一歩ずつ,世界に出るための準備をはじめていきたいと思います.帰国した次の日,Web英会話レッスンの会員になりました.